低所得国と高所得国では、小児がん患者の5年生存率は大きく異なります。
高所得国では約80%の生存率に対し、低所得国においては約20%です。
高所得国では助かる命が、低所得国で生まれたため
助からないという現状があります。
S.Howard, St.Jude-Viva Forum 2009 をもとにジャパンハートが作成
ほとんどの小児がんは、低所得国でも入手可能な抗がん剤や手術、放射線療法で治療することができるにも関わらず、生存率が低くとどまっています。
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診断を受けられない、
診断の遅れ、誤診
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経済的負担
公的援助の欠如
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現地における
治療の限界と⾼い再発率
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診断を受けられない、診断の遅れ、誤診日本ではほぼ100%の患者が小児がんだと正しく診断を受けることができますが、カンボジアやミャンマー、ラオスでは、診断を受けられるのは実際の患者の50~60%の範囲にとどまっていると推測されています。
例えば、カンボジアでは年間600~700人が小児がんを発症していると考えられていますが、実際に小児がんと診断されたのは300人程度にとどまっています。
その背景には、診断技術を持つ専門医の不足や、病院で診察を受けることが地理的に難しい、お金がかかるために病院で診察を受けられない、などがあります。
Lam et al., Science. 363, 1182-1186, 2019をもとにジャパンハートが作成
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経済的負担たとえ小児がんと診断されても治療費が払えず、治療を断念せざる終えない小児がん患者が多くいます。日本のように、高額な小児がんの治療費を国が負担してくれる制度がないからです。
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現地における治療の限界と⾼い再発率⼩児がんのように⾼度な技術が必要な疾患の治療では、医師‧看護師をはじめとする医療従事者の技術や機材が不⾜しているために、病院側が正しい診断や、標準的な治療を提供することができないことがあります。また、⼿術を⾏った際にがんの⼀部が残っており、再発するなどの課題もあります。
感染症が途上国における⼦どもの死因の上位を占めていたことから、各国や国際機関、高所得国の⽀援などでは、より効果的に、より多くの⼈の命を守るための感染症対策や公衆衛⽣に対する取り組みが、優先的に実施されてきました。
その⼀⽅で、⾼度な医療の提供はそれによって助かる⼈たちの数が少なく、提供する技術も費⽤も⾼くなってしまうため、後回しにされてしまっているのが現状です。
また、ジャパンハートが活動する国々では、専門的な知識と技術を身につけ、高度な専門医療を実施できる医療従事者の数が圧倒的に不足しています。 だからこそ、治療はもちろん、医療人材の育成が欠かせないのです。
低所得国では、治療が届かないまま、今も多くの子どもが小児がんで命を落としています。治療が行き渡るためには医療人材の育成や保険制度の充実が必要ですが、それが整うまでの間、私たちが無償で高度な医療を提供することで、子どもたちの命を救うことができます。
その一方で、いつまでも海外からの支援に頼る医療に、持続性はありません。支援に依存せず、自分達の手で高度な医療を提供できる体勢・制度作りのために、高い技術を持つ医療スタッフの育成が必要です。
医療者を育成していくことで高度医療を提供できる現地の医療従事者が増え、現地で次の医療従事者を育成できるようになります。そして、適切な知識や技術を持った医療従事者が増えていくと、医療従事者が集まり国民に医療を提供する病院も増えていきます。そうすることで、現地の医療従事者が現地の人々に適切な医療を提供できるようになると私たちは考えています。