高所得国では助かるはずの命が、低所得国では助からない現状があります。
生まれ育った国や環境にかかわらず、
すべての子どもが平等に医療を受けられるように、
私たちは新たにプノンペンに、「アジア小児医療センター」の開設を決意しました。
ジャパンハートは2004年の設立以来、「医療の届かないところに医療を届ける」をミッションとして、東南アジアを中心とする国内外で20年超にわたり無償で医療を提供してきました。主な活動地は、貧困や深刻な医師不足に喘ぐミャンマー、カンボジア、ラオス。累計治療件数は、30万件を超えています。
2018年には、「貧しい人々にも高度な医療を届ける」ため、小児がんや難病などの患者の受け入れを本格化。感染症などと比較して患者の絶対数が相対的に少ない一方、治療にコストがかかることから、行政や他の国際医療組織の支援から取り残されていた子どもたち。40床の小児病棟はすぐに満床となり、現在では年間100件以上の小児がんの子どもたちを治療しています。
しかし、現状では高度医療を必要とする子ども達のほんの一部しか救うことができません。
カンボジアでは、年間の小児がん発症者数は600人以上と言われています。
そのうちジャパンハートで治療ができるのは、現在のキャパシティでは6人に1人だけ。そして、私たちの病院に辿り着いた子どもたちの半数は、既に病状が進行しているために命を落としています。
小児がんの高所得国における5年生存率は80%。医療にアクセスさえできれば、多くの子どもたちを救うことができるのです。そのためには、より大きな医療活動拠点の新設と、高度な医療機器の導入、そして高い技術を持つ医療者の育成が不可欠です。
ジャパンハートの現在の活動国は、東南アジアでも特に経済成長が遅れている、ミャンマー、カンボジア、ラオスの3カ国。このうちミャンマーでは、2021年のクーデター以来、公立病院の機能不全や物流の停滞などの医療体制が崩壊。ラオスは小国で医療資源が不足しており、十分な治療体制を整えるのが難しい状態です。
医療体制が整っていないのはカンボジアも同じですが、政情が比較的安定しており、高度な医療の提供を阻む要因もありません。これが、私たちがカンボジアを選んだ理由です。
プノンペンはASEANの経済・物流の大動脈となる南部経済回廊の要所にあたり、国内はもちろんミャンマーやラオスを含む周辺国との交通の便に優れています。これに加え、新たに国際空港が建設される見込みがあり、これまでより広い地域からの患者受け入れが可能となります。
私たちは2016年にカンボジアで病院を開設し、これまで6年以上にわたり運営しています。このため、病院の体制構築から人材確保までの基盤ができており、他の活動国よりも新たな病院の開設に向けた下地が整っています。
新病院が開設されることで、カンボジア国内外からの受け入れ患者を増やすことができます。
また、新病院での教育プログラムを通して、カンボジアやその周辺国の医療者のレベル向上に貢献します。
カンボジア国内からの
受け入れ患者数の拡大
ジャパンハートが現在の病院で受け入れることのできる小児患者数は、カンボジア全体のおよそ5%程度にとどまっています。よりアクセスしやすく、受け入れ能力も高い新病院があれば、もっと多くの人々に医療を届けることができます。
周辺国からの
患者受け入れ
カンボジアと同様、高度な医療が必要とされているミャンマーやラオス、さらにはそれ以外の国からも、積極的に患者を受け入れられるようになります。
優れた現地医療者の
育成
病院という器があっても、優れたスタッフがいなければ機能しません。私たちは、カンボジアをはじめとする活動国の医療者の育成に力を入れており、彼らが最新の技術を学ぶ場として、新病院を活用します。
新病院が開設されることで、カンボジア国内外からの受け入れ患者を増やすことができます。
また、新病院での教育プログラムを通して、カンボジアやその周辺国の医療者のレベル向上に貢献します。
2022
病院企画構想
20235月
資金調達
20247月
着工
20259月
完工
10月
開院
私たちは、アジア小児医療センターを、アジア全域の高度な小児医療の拠点とし、必要な患者に医療を届けるとともに、国内外から受け入れた医療従事者を育成し、アジアを代表する医療従事者の育成機関とすることを目指します。
PHASE
1
2025年
年間約150人の小児がん患者を受け入れ
当初は100床の医療機関として開始し、カンボジア国内で⼩児がんと診断された患者の治療件数を拡⼤します。同国で診断を受けている小児がん患者(300名)の約半数にあたる年間150⼈の患者の受け⼊れと治療を⽬指します。
PHASE
2
2026年
国内外の小児がんの早期発見体制を構築
低所得国では、小児がんの早期診断が難しいことが生存率を下げている原因の一つです。そこで、ベッド数を200床に増やすとともに、小児外来を積極的に受け入れ、小児がん以外の患者も含めた治療件数を拡大するなかで、小児がんを含むさまざまな小児疾患の早期診断・治療体制を構築していきます。
PHASE
3
2030年
アジアを代表する小児医療拠点の拡大
アジア全体のサバイバルギャップ削減を⽬指し、本病院をハブとして周辺国から⼩児患者や医療従事者が集う、治療と医療者育成の拠点となることを⽬指します。